サスティナブル建築と高層ビルの壁面緑化

建築と自然の共生は、モダン建築の中で存在感を増しているものの一つです。垂直の森はこの関係を究極的に表したものであり、都市の空気の質、そして住人の生活の質を向上させることを目的としています。
サスティナブル建築と高層ビルの壁面緑化

最後の更新: 09 4月, 2021

高層ビルの壁面緑化はモダン建築のトレンドであり、これはこの産業をよりサスティナブルなものにすることを目的としています。気候変動の問題への意識が高まってきている中、高層ビルの壁面緑化の数もかなり増えています。

専門家によれば、世界中で1分間に2万8千500本もの木が切られているそうです。この危うい潮流に対抗するため、世界最大級の都市では、「グリーンな」建物がデザインされています。

「グリーンな」建築物トレンドを支持する人たちは、自然を自分のデザインの単なる飾りとして使わないようにしています。そうではなく、人と木が共に生きることのできる建物をデザインしようとしています。

私たちの都市は拡大し続けています。将来、多様で革新的な高層ビルが地平線を支配するようになるでしょう。こういった垂直の都市は自立していなければならず、それを可能にするうえで壁面緑化が重要な役割を果たすことになるはずです。

そこで、今日の記事では「垂直の森」を取り入れた高層ビルをいくつかご紹介したいと思います。

高層ビルの壁面緑化-ボスコ・ヴェルティカーレ(ミラノ、イタリア)

壁面緑化 高層ビル

こちらの集合住宅は2014年の10月、イタリアの都市ミランのポルタ・ヌオーヴァ、イソラ地区にオープンしました。これはさらに大きな都市イノベーション計画の一部で、イタリアのHinesという企業主導で行われました。

このプロジェクトは「ミラノの垂直の森」として知られており、約80メートルと約112メートルの高さからなる2つのタワーで構成されています。合わせて480本の大型及び中型の木、300本の小型の木、1万1000本の植栽、5000本の低木が植えられています。これはおおよそ1486平方メートルにも及び、都市部の森林面積の約2ヘクタールに相当します。

ボスコ・ヴェルティカーレはサスティナブルな共同住宅で、大都市の森林再生事業の一部となっています。また、都市を水平に拡大させることなく都市部の生物学的多様性を促進するものとして、環境の再生にも貢献しているのです。

このプロジェクトの興味深い点は、都市の中で自然の垂直の高密度化のモデルとなっているということです。さらに、この提案全体が、大都市や大都会に導入されている森林再生と自然化政策の一部にもなっています。

このプロジェクトは、生物学的多様性を守り、新しい都市の生態系を作ることを目的としています。さらに、植生の素晴らしい味方となっているこの垂直の森は、たくさんの鳥や虫の住処も提供しているのです。

La Tour des Cedres(ローザンヌ、スイス)

壁面緑化 ローザンヌ

この約115メートルの建物は、さまざまな規模の居住用マンションとして使われています。また、オフィスやレクリエーションエリアも含まれており、最上階には展望レストランもついています。

デザインは、ミラノのボスコ・ヴェルティカーレにも関わったイタリアの建築家、Stefano Boeriが担当しました。このビルの普通と違うところは、世界で初めて常緑樹で覆われた高層ビルとなっていることです。

シンプルなラインで構成され、表面にはバルコニーが突き出ており、コンクリートのパネルで補強されていることで、箱が積み重なったような見た目になっています。この箱が動きを感じさせ、自然光の利点が最大限に利用できるようになっています。

しかし、デザインが建築レベルで素晴らしいだけではありません。これは、都市レベルでも重要です。サイズと建築という観点から、このシンプルな建物は都市の移り行く景観において重大な役割を果たしているのです。

その高さも、このヨーロッパの大都市の心臓部分で植物の生物学的多様性を高めるのに役立ちます。その形とヒマラヤスギを利用しているおかげで、この建物の見た目は季節によって変わります。レマン湖を見渡せる有名なランドマークとなるのは間違いないでしょう。

ローザンヌがアバンギャルド建築の都市となるよう期待が込められているのです。この都市は、質の高い建物をサスティナブルな方法で作るという社会的調整ンに対する意識が高い都市なのです。

「木とは一つの個性である。それぞれが独自の進化を遂げ、独自の歴史や形を持っている。」

-Stefano Boeri

今後のプロジェクト

サスティナブル建築 高層ビル 壁面緑化

Forêt blanche(パリ、フランス)

Stefano Boeri Architettiデザイン会社が、約54メートルのタワーを現在計画中です。この建物は大都会パリの郊外ヴィリエ=シュル=マルヌに位置し、表面には2000本もの植物が植えられる予定です。これは森林地帯の1ヘクタール以上に相当します。

Forêt blanche(白い森)の最上階はマンション、下の方の階にはハウスオフィスや商業施設が入る予定です。植物がビルの四面全てのバルコニーを覆うように計画されています。

東と西のサイドにはたくさんの窓が取り入れられ、「日光が一日中差し込み、自然の照明と通気が実現し、パリの真ん中で絶景を見ることができる」ということです。

ホーソーンタワー(ユトレヒト、デンマーク)

ホーソーンタワー サスティナブル建築 高層ビル 壁面緑化

この垂直の森はユトレヒトに2020年オープン予定で、Jaarbeursboulevardエリアの国際開発コンペで優勝したプロジェクトでした。ご紹介した他のものと同様、これもStefano Boeri Architettiのデザインです。

ホーソーンタワーと名付けられたこの垂直の森は、ユトレヒトの真ん中に立てられる予定の二つのタワーのうちの一つです。約91メートルの高さがあり、1万本以上のさまざまな植物が植えられる予定です。

このプロジェクトは「都市と自然の画期的な共存経験」を作り出すことを目的としています。表面を緑化することで、タワーが5.4トンの二酸化炭素を吸収してくれます。これが空気の質の改善に役立ち、ひいては都市の住人の生活の質の改善につながるのです。

 

ご覧の通り、高層ビルの壁面緑化はポピュラーなトレンドとなっています。あわよくば、この垂直の森が世界中の都市で開発され続け、自然が建築のバックボーンとなる日が来ればいいですね。