ルイス・バラガンの建築とユニークな彩色

ルイス・バラガンの建築作品は、それが伝えるさまざまな感覚から他とは一線を画しています。彼にとって、彼の空間の調和を強調する上では、色が必要不可欠なツールだったのです。
ルイス・バラガンの建築とユニークな彩色

最後の更新: 07 2月, 2021

ルイス・バラガンの建築において、色は重要な役割を果たしています。彼の作品にとって色は、寸法や光と並ぶくらい重要な要素です。彼のカラフルな建築物は粗い質感とリフレクティング・プールに反射する光によって、存在感を増すのです。

ルイス・バラガンは、ラテンアメリカそして世界中の建築・造園界において重要な存在です。このメキシコ人アーティストの作品からは、彼が光と色の使い方を非常によく心得ていたことがわかります。

彼の作品はシンプルでまっすぐなラインがたくさん使われていますが、色の配置や選択大胆です。建築作品において、彼はグラフィックツールとして色を使用したのです。それに巧みな光の使い方が合わさり、本当に生き生きとした空間を作っています。

また彼は、光に新しい重要性を持たせました。光の反射のさせ方によって建築物に動きや感情を与えたのです。バラガンの光と色の相互作用は、コンスタントな感情の変化を起こさせます。

これらは彼がインテリアデザイン、エクステリアデザインどちらにも適用したコンセプトです。建築家として、彼は眺望の使い方においても計り知れない能力を見せつけました。彼の作品を理解することは、モダン建築の中の建物と景色の関係性を理解する上で重要なカギとなっています。

ルイス・バラガン―彼の作品に影響したもの

ルイス・バラガン

ルイス・バラガンはコラレスの農場で平和な子供時代を過ごしました。このメキシコの田舎の環境が彼の最初の強い記憶の一つであり、芸術家としてのバラガンに明らかに大きな影響を与えたものでした。

自然、木々、民族的な伝統に囲まれて成長したことで、ヴァナキュラー建築や民族文化が彼の人生において非常に重要なものとなったのです。

1980年のプリツカー賞受賞スピーチで、彼は以下のように話しています。「私が達成してきたことのすべての根幹には、子ども時代や思春期を過ごした父の農園の思い出が詰まっています。私の作品では、モダンな生活のニーズの中に、あの魔法のような田舎での懐かしい年月をなんとか溶け込ませようとしてきました。」

メキシコの伝統や地元の環境の感覚的な部分などの民族文化は、彼の作品に大いに影響を与えました。ルイス・バラガンの建築は色彩、香り、そして母国であるメキシコへの賛歌なのです。

色はメキシコ文化においても重要な役割を持っています。民族的デザインでは鮮やかな色が使われ、それが芸術におけるユニークな側面にもなっています。バラガンはこのアプローチを巧みに用い、色によって強烈で活気に満ちた空間を作ったのです。

1924年には、南ヨーロッパと北アフリカを旅することにしました。この旅行中、グラナダのアルハンブラののどかで堂々とした様や、アフリカのヴァナキュラー建築に驚かされました。また、ル・コルビュジエの講演にも何度か出席しています。

ルイス・バラガン建築における色

ルイス・バラガン 建築 色

ルイス・バラガンがカラースキームを決定するプロセスを理解しようとするならば、彼のデザインのメカニズムを理解しなければなりません。彼は頭の中にある空間感覚を確固たるものにするために、常にスケッチやデッサンを行っていました。

そしてこれらのスケッチを彼のチームへと渡し、そのチームがフロア計画を立てます。チームで議論し意見を闘わせ、最終的なドラフトにたどり着くまでこの計画を練ります。

ですが、チームが建築に取り掛かる前に、バラガンが最後のステップを踏みます。建築家やアーティスト、芸術歴史家の友達などを招いて、そのプロジェクトを評価するのです。自分のスケッチを見せ、自分の求めているものの感じを伝えるためにスピーチをしたりしました。

色や素材はたいていはオリジナルスキームには含まれていませんでした。実はこれらはその空間をどんなものにしたいかについて考える中で、直感的に出てくるものだったのです。

独特な創造プロセス

彼の創造プロセスの独特な点は、建築中の建物で実験をするというアイディアを強く支持していたということです。空間を変化させるために壁の寸法を変えたり、新しく壁を追加するなどということはしょっちゅうだったのです。

バラガンは彼の建築プロジェクトの色を最終決定する際にも同じプロセスを使いました。壁に立てかけた段ボールパネルにとりあえず色を塗り、最終的な作品がどんな印象を作るかを見ていたのです。

それからパネルを取り除いて違う色を塗ったり、カラースキームを変えずに単に動かしてレイアウトを変えたりしていました。また、すでに壁に色を塗り終わった後で光の当たり方を見て色を変えると言い出すことも多々ありました。

バラガンの作品において、色がどれほど重要かがお分かりになるでしょう。プロジェクトの最後の最後まで色を検討していたのです。色はその空間の感覚を伝える媒介であり、それは建物の表面やプロポーションにつながっていたのです。

「私は「エモーショナル・アーキテクチャー」を信じている。建築がその美しさによって人を感動させられるということは、人類にとってとても重要なことだ。」

―ルイス・バラガン―

ヒラルディ邸―巧みな色の使い方

ヒラルディ邸 ルイス・バラガンの建築とユニークな彩色

メキシコシティにあるヒラルディ邸は、チャプルテペック公園の南に位置していおり、パティオと廊下でつなげられた二つの構造でできています。

まず大きい方の構造は三階建てで、寝室が入っています。もう一つの方はパティオの反対側にあり、キッチンなどの機能的スペースとなっています。

ヒラルディ邸では色が非常に新しい使われ方をしています。パティオにはライラックを使うことで鮮やかで活気のある空間になっています。廊下はダイニングやインドアプールなど家の重要な場所へとつながる移行スペースとして機能しています。

プールの外の離れたところにあるピンクの壁には目をやらないわけにはいきません。これは水平な水と完全なコントラストを作っており、天井と同じくらいの高さがあります。この独立した壁が、空間に全く新しい様相を加えているのです。静かで神秘的な空間に変身させ、環境の中に緊張感を持たせています。

 

まとめると、ルイス・バラガンの色の使い方には、彼の故郷と深いつながりがあると言って差し支えないでしょう。彼の建築における色使いは、数えきれないほどの研究や論文で取り上げられています。彼がデザインした鮮やかで神秘的な空間を分析し解剖しようとせずにはいられないのです。