パイミオのサナトリウム―モダン建築の成功例

パイミオのサナトリウムは、モダン建築ムーブメントの最も重要な例の一つです。アルヴァ・アールトの最も偉大な功績は、当時の建築スタイルに彼自身のユニークな視点を取り入れ、その代表作に人間のことを第一に考えたデザインを行ったことでしょう。
パイミオのサナトリウム―モダン建築の成功例

最後の更新: 25 10月, 2020

フィンランドにあるパイミオのサナトリウムは、フィンランド人建築家アルヴァ・アールトの最も偉大な作品の一つです。アールトのデザインは1929年に新しい病院を建てるためのデザインコンペで優勝しました。

このプロジェクトは機能的でありながら人間を第一に考えたアプローチをとっていますが、これはアールトの建築スタイルに典型的な特徴です。彼の作品はモダン建築の典型的な機能的性質を超え、詳細に大いに気を配ったものとなっています。

パイミオのサナトリウムはフィンランド建築のターニングポイントとなり、アールトにとってもキャリアを大きく躍進させたプロジェクトだったと考えられています。アールとの建築はモダニズムのムーブメントと関係した建築の明らかな例です。

モダン建築という観点で、この新しい病院はフィンランドを有名にするのに役立ちました。この建物は現在ユネスコ世界遺産の候補地として挙がっています。

パイミオのサナトリウムはどこにある?

この病院は美しい田舎の景色が望めるフィンランドの東南、その地域で最も標高が高い場所の一つであり、フィンランドの都市トゥルク市から約30キロほど離れたところに位置しています。いくつかの建物から成る複合建築群であり、周りの環境と対話しているかのようです。また素晴らしい景色を臨め、あふれる自然光を享受できるようになっています。

「モダン建築とは未熟な新しい素材を使うことではない。大切なのはもっと人間のためを考えて素材を再定義することなのだ。」

―アルヴァ・アールト

デザインのコンセプト

パイミオ サナトリウム

アルヴァ・アールトは、このサナトリウムを296名の患者のためにデザインし、結核を患う人の療養とリハビリを促すようなスペースを作りました。アールト自身は、この建物を「医療機器」だと言っており、それは医者にも患者にも機能するものでした。

この病院は患者の部屋、共同ルーム、休息エリアとしての大きなテラスなどの異なるエリアに分けられています。アールトはそれぞれのスペースをその機能に合わせて事細かにデザインしています。部屋の向きまでも景観を最大活用するために選んでいます。

また、病棟以外にいくつかの他の用途の建物もあります。医者やその他のスタッフはメインの病棟からは離れた建物にいられるので、シフトの間に休憩する際によりプライバシーを確保することができます。

パイミオのサナトリウムのレイアウト

アールトは患者の部屋やリラクゼーションエリアのある複合建築のメインブロックのデザインに重きを置いています。こういったリラクゼーションエリアは各フロアの角に設置され、特に目立つようになっています。

患者の部屋は南東を向くようになっており、リラクゼーションエリアは南向きです。このように部屋の向きをデザインすることで、アルヴァ・アールトは自然光とそのヒーリング効果を最大限に利用して、療養や回復を促進しようとしたのです。

メインの建物の天井全体は、屋根付きのルーフトップテラスとなっています。ここは120人まで収容することができ、周りの素晴らしい景色を楽しむことができます。

患者の部屋は2人用で、快適さを最大限まで追求するために注意深くデザインされました。例えば、アールトは間接人工照明を使い、まぶしさを軽減するため天井は緑色にしています。

他にも患者の回復を助けるためのこだわりとして、天井に暖房機を取り付けることで直接的な熱放射を避けています。また、彼は設備や家具類も特別注意深くデザインしています。例えば、シンクの形は流水の雑音ができるだけ小さくなるようになっているのです。

さらにアールトは患者のケアと回復のために家具までもデザインしています。最も注目に値する家具はパイミオ・チェアでしょう。 その人間工学に基づいたデザインは、患者がより楽に呼吸ができるようにデザインされています。

アルヴァ・アールト

パイミオのサナトリウムへのアクセス

パイミオのサナトリウムへの道は密集したマツの林を抜けて車でしか行くことができません。都会から離れた場所にありアクセス方法が限られていたため、アールトは見た目のデザインにはあまり重要性を置いていません。その代わり、彼の作品のインパクトは田舎の真ん中にこのような複雑な複合建設があるという驚きにあるのです。

見た目

パイミオのサナトリウムはさまざまな種類の患者の住居とするためにデザインされました。自然光と病院の庭がこの建物群全体の一部を成しており、患者の回復を助けるのです。

すでに触れたように、アールトは病院のインテリアを隅々までこだわってプランニングしました。例えば、ロビーや廊下には角を丸くした壁を取り入れたりしています。

彼はまた、可能な限り日光と新鮮な空気が各部屋に入るようにデザインしています。そのために、日光がたっぷり入るように部屋には大きな窓が取り付けられています。