フランク・ゲーリーと脱構造主義

フランク・ゲーリーのデザインは明らかに脱構造主義建築から発想を得ています。曲がった線と挑戦的な素材が、家具に動きと真のエレガントな雰囲気を与えています。
フランク・ゲーリーと脱構造主義

最後の更新: 10 9月, 2020

フランク・ゲーリーは有名な建築家であるだけでなく、彼は脱構造主義という終わりのない旅路を続ける素晴らしい家具デザイナーでもあります。これは彼の作品に共通するテーマであり、自身のオフィスがその典型的な例になっています。

ゲーリーは20世紀の最もすばらしい10人の建築家に挙げられます。スペインのビルバオにあるビルバオ・グッゲンハイム美術館など象徴的な建物を建築しています。

彼は芸術的な観点を持った建築家です。彼の眼には、建築とは芸術表現の一つだと映っています。ある意味、建築物を作っているというよりは機能的な彫刻を作っていると言えるのではないでしょうか。

脱構造主義の建築家として、60年代の終わりから足を踏み入れた家具デザインの世界では、すぐに「イージー・エッジズ」や「エクスペリメンタル・エッジズ」などのラインで名を馳せるようになりました。

略歴

フランク・ゲーリーと脱構造主義

本名フランク・オーウェン・ゲーリーは、1929年2月28日にカナダのオンタリオに生まれ、1947年からはロサンゼルスに移り、南カリフォルニア大学を1954年に建築の学位を取って卒業しました。そして数年後ハーバード大学デザイン大学院で都市計画の研究を行いました。

1961年ごろ、家族と共にパリに移住し、アンドレ・ルモンデのアトリエで働き始めます。ルモンデの元にいる間に、ル・コルビュジエのようなヨーロッパの建築家の作品について学びました。

1962年、ゲーリーはロサンゼルスに戻り、自分の会社を立ち上げます。それが“Frank O. Gehry & Associates”でした。さまざまなプロジェクトとともに会社はスタートしましたが、1979年に象徴的なゲーリー邸ができました。

ゲーリー邸はその後の成功のカギとなりました。このプロジェクトを通して、彼は独自のスタイルを持った建築家としての基礎を築くことになったのです。

最初から、ゲーリーは自分の建築プロジェクトにおいて専門家のようにパース、カーブ、そして素材をどうコントロールするかを心得ていました。ちなみに、金属やガラスなどの廃材を好んで使っています。

ゲーリーは脱構造主義を追い求めています。これは基本的な建築の原則を壊そうとする建築ムーブメントです。脱構造主義の波の中で、ゲーリーは曲線と視覚的にコントロールされたカオスを作り出すコンスタントな動きの要素を取り入れています。

フランク・ゲーリーと脱構造主義:代表的な作品

ビルバオ・グッゲンハイム美術館(ビルバオ、スペイン)

グッゲンハイム美術館

ビルバオ・グッゲンハイム美術館は、スペインのビルバオにあり、20世紀の前衛建築の素晴らしい一例です。その画期的なデザインはビルバオの河口に命を吹き込んでいます。

ゲーリーは自身のユニークなスタイルをこのビルバオ・グッゲンハイム美術館に使っています。個人的なスタイルに加え、魚の鱗の触感からインスピレーションを得ています。 その結果、この芸術作品が生まれたのです。彼のほとんどの作品と同様、この美術館には幾何学的感覚が一切ありません。

ホテル・マルケス・デ・リスカル(ラ・リオハ州、スペイン)

ホテル・マルケス・デ・リスカル フランク・ゲーリーと脱構造主義

このプロジェクトもまた、ゲーリーの紛れもなく個性的な彫刻的建築の一例です。線がくねくねと曲がっており、複雑な形を生み出しています。

この建物はピンク、金、銀などのさまざまな色のチタニウムのレイヤーで覆われています。これらの色が建物のカーブと合わさって、マルケス・デ・リスカルのワインの色合いに似た、赤っぽい色の反射を作り出すのです。

ウォルト・ディズニー・コンサートホール(ロサンゼルス、アメリカ)

ウォルト・ディズニー・コンサートホール

ウォルト・ディズニー・コンサートホールもまた、このカナダの建築家ゲーリーの才能を存分に生かした、ゴージャスな形を誇っています。 線が対象やハーモニーといった伝統的な建築にある法則を全く無視しているように見えます。その外観は、今にも出航しそうな船を想起させますね。

この建物は鉄の貝で覆われ、相互に重なり合ったパーツでできています。その貝のサイズはさまざまなものがあり、まっすぐのものもあれば、有機的で波打った表面をしたものもあります。ガラスの表面は異なるパーツをつなぐ役割をしています。

「建築はその時と場所がはっきりわかるものでありつつ、時を感じさせないものであるべきだ。」

―フランク・ゲーリー―

フランク・ゲーリーの作品と脱構造主義

フランク・ゲーリーはカーブや曲がりくねった線を愛する建築家です。また、さまざまな素材の使い方も模索しています。この常に何かを探し求める姿勢から、色々な素材で実験を行うことのできる家具デザインの世界にたどり着いたのです。

彼の「パワープレイ」ラインのアームチェアや椅子がいい例です。このコレクションでは、ブナ材を曲げるのに蒸気を使いました。他にも「ウィグル」コレクションでは、家具を作るのにうねった段ボールと木材を使用しました。

フランク・ゲーリーの家具:「パワープレイ」の椅子

パワープレイ フランク・ゲーリー

ゲーリーはノール社に前衛的な家具をデザインするために招かれ、新しいアイディアや新しい素材や構造の使い方を実験する機会を得ました。

そして1991年、ゲーリーは層状のブナ材でできた椅子とテーブルのコレクションを発表します。これはニューヨーク近代美術館で初めて一般に公開されました。

この椅子は、自身が子どもの頃によく遊んだリンゴを入れる木箱の構造から発想を得ていると説明しています。彼自身の懐かしさを少しだけ取り入れて作ったのです。

フランク・ゲーリーの家具:「ウィグル」の椅子

ウィグル フランク・ゲーリー

「ウィグル」の椅子は、そのユニークな形と素材から家具デザインの傑作となっています。これは実に世界的に愛されているデザインです。

この椅子はゲーリーがうねりのある段ボールで作ったカーブの積み重なりでできています。軽い素材ですが、このチェアは丈夫で安定しており、段ボールでできているようには見えません。

このデザインは1972年にまで遡り、当時は家具というよりも彫刻として考えられたものでした。しかし当初の目的とは異なり、ヴィトラ社が1997年に売り出しました。

この椅子は「イージー・エッジズ」コレクションの一部で、段ボール家具や彫刻をモチーフにしたものです。ゲーリーは、イスとマッチするスツールもデザインしています。

フランク・ゲーリーの家具は彼の建築を体現する脱構造主義への模索が形になったものです。彼のデザインは脱構造主義のすばらしさを保ったまま、建築から家具へと引き継がれたのです。